2016年度の「大阪府立茨木高等学校」との連携では、「課題研究」における指導を中心に、ディベート指導、「世界の屋台体験」イベントや「哲学カフェ」など、多岐にわたる事業 を展開しました。先生方や生徒のみなさんからの声を交えて、連携事業の概要を紹介いたします。

 

校長ご挨拶

本校は平成23年度から大阪府によってグローバル・リーダーズ・「ハイスクール」10校のうちの1校に指定されています。

本校が教育活動の中で重視しているのは、「考えること」「議論すること」です。授業において議論する機会を多く設けるとともに、自治活動や部活動においても議論することを生徒に求めています。2年生後期の授業で行う「課題研究」はその中でも特徴的な取組です。「課題研究」は、平成24年度から始めた取組で、文理学科の生徒160人が15程度の分野に分かれ、さらに各分野で小グループに分かれて、自分たちでテーマを決め、研究を行うものです。

昨年度、京都大学大学院文学研究科応用哲学・倫理学教育研究センターにご支援いただき、本校の課題研究の内容はこれまで以上に深いものとなりました。研究の進め方の形式については、様々な書籍等を調べればある程度は分かりますが、自分たちが進めようとしている「研究」の進め方の内容が妥当かどうかについては、高校生にとって意識が薄くなりがちです。その根本的な部分でのご指導・ご助言をしていただき、学問する姿勢について様々な気付きを得たことは、彼ら彼女らにとって、今後高等学校での学びの姿勢と内容に大きな影響を得るだけでなく、大学に進学して研究に取り組む際の大きな力になると確信します。また、課題研究のほか、2年生の保健の授業でのディベート、2年生の英語の授業でのディベート、課外での「哲学カフェ」等でもご支援いただきました。

昨年度1年間のご支援を通して、本校において「考えること」「議論すること」の意味はますます大きくなってきました。今後も引き続きご支援いただけますよう、ぜひともよろしくお願いいたします。

大阪府立茨木高等学校
校長 岡﨑 守夫

 

 

課題研究

茨木高校の「課題研究」では、生徒たちが15程度の分野に分かれ、さらに各分野のなかで3〜4人程度の小グループに分かれて、年度末の校内発表会を目標に研究を行います。また、そのうちの1グループは茨木高校の代表として、大阪府のGLHS(グローバル・リーダーズ・ハイスクール)合同発表会で発表を行います。以下では、GLHS合同発表会の代表に選ばれた「銀樹」の研究グループと、本研究科所属の台湾からの留学生と交流学習を行った「宿泊野外を深める」のグループの生徒のみなさん、および担当の先生からのコメントを紹介します。

「銀樹」研究グループ

理科教諭 神前 喬
本校の課題研究授業において、京都大学大学院文学研究科の大西琢朗先生にお越しいただき、ご指導をお願い致しました。理系のテーマ「溶液中における銀樹の成長過程と形態変化」の研究活動にも様々なアドバイスをいただくことができました。

研究の基礎基本であり醍醐味ともいえる、先人の知恵や専門知識を蓄えながら、同時に自らの考えを深め展開していく知的活動は、良き指導者があって初めてなし得ることです。一線の研究者と議論を交わすことで生徒達は、学問とは単純に与えられた問題を解くことではない、ということにも気付いていきました。大西先生のご指導により、生徒達はリベラルアーツの基礎基本を踏まえ、学問の入り口まで自力で進んで行くことができました。

自ら学んで議論を深めることに加えて、それを正確に端的に伝える手法について、生徒も教員も大変多くのことを学ぶことができました。ご指導くださいました大西先生、今回の機会を提供してくださった京都大学大学院文学研究科教授 出口先生には大変お世話になりました。この場をお借りしてお礼を申し上げます。

3年 岡本亜美
先般は茨木高校の課題研究においてご指導頂きありがとうございました。
このような、大きな学術発表の経験が無い私たちにとって、大西先生からのアドバイスはハッとするものばかりでした。発表内容が銀樹の成長という理系の題材で、使う語句の一つ一つが、難しく、聞き手に伝わりにくいものでした。発表にあたり内容を犠牲にせずに分かりやすさを追求する、このバランスの取り方がなかなかの難所でした。大西先生のご指導で、スライドの順番を変えてみたり、少し不要だなと思ったところは省いてみたりと、思い切った事も大切で、必要なことだと学びました。

また、研究を進めて行くにつれて、少しずつ出てくる疑問がありました。それに一つ一つ対処していくうちに自分たちは結局何を突き止めたいのか、と言う大きな目的を見失いそうになっていたことに気づかせて頂きました。私たちは、目の前に生じた問題で精一杯になっていたせいで、研究をする際に大事なことを上手く扱えていなかったのかもしれません。

この学びは、これから様々なことに活かすことができると感じています。約半年間でしたが、本当にお世話になりました、ありがとうございます。

 

「宿泊野外」研究グループ

社会科教諭 山内敬宏
課題研究を受講した70期生は、2016年6月に台湾で宿泊野外活動(修学旅行に当たる行事)を行った。課題研究のテーマとして、「宿泊野外を深める」を選んだ14名は、それぞれ興味をもったテーマを元に4つのグループに分かれて研究を始めた。
京都大学の台湾からの留学生2名に協力を依頼し、10月24日、12月19日の2回(それぞれ約1時間)にわたって指導をしていただいた。

10月24日(第3回)は生徒が研究テーマを絞り込んでいくことを目的とする授業に参加していただいた。留学生の、日本への留学の目的や研究のテーマなどを自己紹介を交えてうかがった後、生徒が台湾での活動を通じて感じたこと、疑問に思ったことなどに答えていただいた。生徒は英語でのやりとりに苦労しながらも、台湾に関する基本的なことがらを確認でき、大変有意義な会となった。

留学生の研究への意欲的な態度や生徒に対する好意的な受け答えに触れて、生徒の意欲も高まったように思う。感謝したい。
12月19日(第8回)は、1月の校内における発表のための「中間発表の会」に、「審査員」として出席していただいた。第3回以後の研究のまとめを英語で4つのグループで行い、それぞれに対して丁寧なコメントとヒントを与えていただいた。留学生の方々の専門分野ではない発表がほとんどであったが、留学生の率直な意見はたいへん参考となった。生徒は、英語で意見をまとめて伝えることの難しさをあらためて感じたようであった。

2回にわたって短い時間ではあったが、研究を進める上での「骨組み」作りに留学生に学ぶ機会を持ったことは大きな意義があったと考える。生徒は留学生の学びの姿勢からも影響を少なからず受けたのではないかと思う。
生徒が設定しようとするテーマにもよるが、今後も留学生と学び、留学生に学ぶ機会が与えられれば幸いである。

3年 星野円香
私たちは、課題研究を進めるにあたって何も知りませんでした。そんな時にヒントを与えてくださったのが大西先生でした。何をテーマにするのか、どういう方向で進めていくのか、私たちの考えを考慮しつつアドバイスを下さり、私たちは試行錯誤しながら課題研究を進めることができました。また、私たちの研究テーマは最初、「日本による台湾の統治」でした。そこで非常に参考になったのが、京都大学の台湾からの留学生のお話です。一つ例を挙げるとすれば、私は台湾では日本による統治時代について学校で詳しく教えていると思っていました。しかし、実際はそこまで詳しく授業で習っていないそうです。このことは、本やインターネットでは得られなかった情報であり、実際に台湾の方にお話を聞けたことで、私たちの研究は内容の濃いものになったと思います。

もう一つ、留学生と交流してよかった点があります。それは英語です。普段、学校の授業で英語を勉強しているのに英会話になると、言いたいことがうまく言えない、そんな状況でした。自分の英語力を再認識でき、もっと実戦的に英語を話す力が必要だと感じました。

私は、京都大学の先生にご指導いただき、また、留学生の方と交流することができて、非常に良い経験をしたと強く思います。

 

ディベート指導

茨木高校では、前期は「保健」授業で臓器移植や代理母出産などの「命」をテーマにしたディベート、後期は「英語表現」授業でグローバルな問題にかかわるテーマについての英語ディベートを行っています。本連携事業では、本研究科倫理学専修博士後期課程の井保和也さんが、前期(9月)、後期(2月)の合計12回にわたり茨木高校を訪問し、指導を行いました。

 

世界の屋台体験

12月23日に、本学経営管理大学院修士課程のSean Collettさん、本研究科研究員(当時)のJames Fyfeさんが茨木高校を訪問し、二人の故郷であるオーストラリアとニュージーランドの料理を生徒たちと一緒に調理しました。その後、二人から両国の文化について、生徒からは日本の文化について、たがいに発表を行いました。
 

 

哲学カフェ:「科学の進歩は幸福をもたらすか」

3月27日に金沢医科大学の菊地建至講師をファシリテータとして招へいし、「哲学カフェ」を開催しました。卒業生、教員も含め、30人ほどが参加し「科学の進歩は幸福をもたらすか」というテーマのもと、活発な議論を交わしました。